The Immortal Hulk #1
公開日:2025/10/17
"Or Is He Both"
アリゾナ州ロクソンのとあるガスステーションにて、母親と旅行中の12歳の少女サンディ・ブロックハーストが軽食を買いに立ち寄る。サンディが飲み物を選んでいたところ、店内で立ち読みをしている深く帽子をかぶった男と目が合う。男の異様な雰囲気に違和感を覚えながらも、飲み物を手にレジへ向かう。そのタイミングで別の男が入店し、レジ係に銃を突きつけ金を要求する。強盗を目撃して動揺したサンディは、思わず手に持っていた飲み物を落とし、瓶を割ってしまう。その音に反応した強盗は反射的にサンディを射殺してしまう。それを目の当たりにした帽子の男は強盗を止めようとしたが、暴走した強盗は帽子の男も射殺した。さらに強盗はレジ係も撃ち、金を奪って逃走する。

事件当日の夜、現場で捜査を進めるグロリア・メイズ刑事と記者のジャッキー・マクギーは事件について会話する。メイズ刑事は、射殺された被害者の一人である帽子の男が「ジョン・ドウ」と呼ばれる身元不明の人物であることを伝える。ガスステーションの監視カメラはぼやけていて証拠としては使い物にならず、唯一の生存者であるサンディの母親も、強盗の服装しか覚えておらず、逃走時に使用した車のナンバーも見ていなかった。証拠が少ない中で調査を進めるしかない現状に、メイズ刑事は苦悩の表情を見せる。
その頃、3人の遺体が収められた検視室で不可解な現象が起きる。帽子男=ジョン・ドウの遺体の腕が緑色に変色し、強靭な筋肉に膨れ上がる。その帽子男の正体は、シビル・ウォーで死んだはずのブルース・バナーだった

ガスステーションの一件の犯人であるトミー・ヒルは、ギャング「ドッグズ・オブ・ヘル」のアジトとなっている古びた住宅を訪れる。ヒルはギャングへの借金返済のため、ガスステーションの強盗に及んだのだった。ギャングのリーダーは、ヒルが強盗で得た金を受け取ると、残りも早く持ってくるように言い放ち、ヒルを追い返す。その時突然、大きな爆発音とともにアジトが停電する。驚くメンバーは外の様子を見に行くと、発電機が木っ端微塵に破壊されているのを目にする。ギャングたちは襲撃者を待ち伏せし、入り口を警戒するが、強靭な緑の腕が壁を貫き、リーダーを襲う。ギャングたちの悲鳴と銃声を背に、ヒルは慌てて車に向かう。落とした鍵を拾おうとしたその時、突然周囲が静まり返る。異変を感じたヒルは怯えながらもアジトに戻るが、その背後には超人ハルクが立っていた。
「...重いだろ? "抑止力"ってやつは。 射撃場で紙の的を撃つ時より、ガスステーションで感じたあの重みはずっと重かったはずだ。」
「...心のどこかで考えたこと、あるだろ? もしその力を解き放ったら、何がどうなるんだろうって。」
「なあ、トミー。俺がどうやってお前を見つけたと思う? あの引き金を引いた瞬間から、お前はずっと自分に嘘をついてきた。...俺には "嘘つき" の匂いが分かるんだ。」
「...心のどこかで考えたこと、あるだろ? もしその力を解き放ったら、何がどうなるんだろうって。」
「なあ、トミー。俺がどうやってお前を見つけたと思う? あの引き金を引いた瞬間から、お前はずっと自分に嘘をついてきた。...俺には "嘘つき" の匂いが分かるんだ。」

翌日、メイズ刑事とマクギーは病院を訪れる。ヒルは全身の骨がほぼ粉砕され、肺は潰れ、内臓も損傷した状態で、病院の駐車場にできたクレーターのような瓦礫の上で、犯行に使われた銃と共に発見された。その銃とギャングメンバーの証言から、ガソリンスタンドの犯行はヒルによるものと特定される。一方で、ヒルを襲ったのは誰なのかが議論される。メイズ刑事はギャングの証言と、検視室からジョン・ドウの遺体が消えていたことから、それはハルク=ブルース・バナーだと推測する。マクギーは、ブルースは確かに死に、葬式も行われたと主張し、メイズ刑事の推測に懐疑的な態度を示す。しかしメイズ刑事は、確かにブルースは死んだが、ジョン・ドウも確かに死んでいたと語る。マクギーは言葉を詰まらせ、編集長のもとへ駆け出す。
場面はモーテルへ移り、身を潜めるブルースは、鏡に映る“もう一人の自分”--ハルクを見つめる。
「僕は悪者じゃない……だよな……?」
